社説:宅配便全体の活性化期待
日本郵便のゆうパック事業が攻勢を強めている。
宅配便市場シェア第3位とはいえ、2強から「遠く離された3番目」(日本郵便)であり、真っ向勝負と言うより、得意分野から切り込む作戦のようだ。
狙う市場は、「成長の通販」と「収益の個人」だ。成長性が高い通販市場では、郵便の得意分野である「薄物・小物」と呼ばれる小型商材の取り込みを狙う。小回りの利くバイク配達で同業他社より低コストで配達できる点が強みだ。
「薄物・小物」市場は、通販市場の約4割を占めるといい、書籍・DVDなどソフト、化粧品、健康食品などの分野でシェア拡大をめざす戦略だ。
宅配各社が午前と午後の2便体制なのに対し、郵便は午前と昼、夕方の1日3便体制だ。この3便体制を武器にアマゾンの当日配達も展開している。また、首都圏で三越の食材を夕食に間に合うよう当日配達するサービスも3便体制を活用したものだ。
一方、運賃単価が高く収益性が高い個人市場では、ネットオークション出品者からのオークション商品発送需要を取り込む。楽天、モバオクと連携し、運賃の割引やポイントの付与などで囲い込む作戦だ。
個人市場では、全国2万4千の郵便局と提携コンビニ1万2800店というアクセスポイントの多さが強みだ。ゆうメールによるDVD/CD宅配レンタルもポストというインフラを活用したサービスといえる。
ゆうパックは、一昨年7月のペリカン便との統合の際、配達遅延が発生して顧客が離れ、配達品質のイメージを大きく損ねた。日本郵便によると、現在はライバル・ヤマト運輸をも凌駕する品質だといい、イメージ戦略が今後の課題だという。宅配各社はテレビCMなどでイメージ戦略に注力しており、ゆうパックがどのようなイメージ戦略を今後打ち出してくるのか、注目される。
10月から施行された改正郵政民営化法により、ゆうパックの新規事業が許可制から届出制へと緩和されたことで、これまで以上に自由な事業展開が可能となった。
持ち株会社である日本郵政は、3年後の2015年秋に株式を上場する計画だ。赤字であるゆうパック事業を同時に黒字化する目標も掲げている。
サービスを受ける利用者からすれば、選択肢は多いに越したことはない。各社が知恵と工夫でサービス競争にしのぎを削ることで、宅配便市場全体の活性化につながることを期待したい。