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日本流通新聞1月1日付紙面から

社説:質を高めて業界活性化を

 2013年の幕が開けた。
 衆院選で自民党が圧勝し、再び政権交代が起きた。為替は円安に振れ、株価は上昇。日本経済再生への期待が膨らむ。自民圧勝は、政治の安定を望む民意の表れかもしれないが、民主党に失望した有権者が消去法で自民党を選択した側面もあろう。昨年9月以降の中国での反日感情の高まりで自動車販売などが大打撃を被り、国内景気も後退色を強めた。経済の安定、成長には政治の安定が欠かせない。新政権には適確な経済政策、外交政策などを望みたい。金融緩和による国内需要創出にも期待したい。
 一方、物流業界、トラック運送業界である。通販市場の拡大で元気のある宅配市場、荷主の物流コスト削減ニーズに応える3PL市場など、部分的に好調な市場はあるものの、基本的には国内輸送需要の拡大が見込めないなかで規制は緩和されたまま、事業者数は増え続けており、厳しい競争環境に置かれている。
 事業者の小規模化が進展し、下請けの多層化もあって実運送の運賃水準が下落。しわ寄せは運転者など従業員の賃金にもおよび、若年労働者が魅力を感じて就職する職種ではなくなりつつある。事業者の質の低下が叫ばれて久しく、「事業許可の重みがなくなった」との声も聞かれる。
 5台のリーストラックさえあれば始められるトラック運送事業。あまりにも簡単に事業を始められる制度に疑問の声が寄せられ始めている。需要が縮小する中で、供給拡大一辺倒の規制緩和の見直しが求められているのだ。
 トラック産業将来ビジョン検討会に設置された最低車両台数・適正運賃収受ワーキンググループが12月25日に検討会に提出した報告書では、最低車両台数の引き上げ、緊急調整措置の発動、標準運賃の設定といった業界が要望した措置はすべて実現困難と結論づけられ、2年間の検討が水泡に帰した感が漂う。
 ワーキング報告書では、参入時の事前チェック強化、5台割れ事業者に対する運行管理者選任義務付け、契約の書面化義務付け、参入時の法令試験の出題範囲拡大といった施策が盛り込まれたが、いずれも小粒な印象は否めない。
 その将来ビジョン検討会では、近く新たな作業部会を設置して、引き続き規制緩和後の課題について検討を継続する。
 前回のワーキングでは、検討に2年間を要したことを踏まえ、新作業部会にはスピード感が求められる。国交省では、ある程度見通しが立っている施策については半年程度で結論を出し、さらに検討を深める場合でも1年程度でとりまとめを行いたい考えだ。
 新作業部会では、参入時規制の強化(許可基準の厳格化)、多層構造の弊害解消策、運送契約の書面化義務付け、共同点呼の検討、適正化事業実施機関の機能強化、事後チェックの充実などを検討課題として列挙し、事業許可更新制についても引き続き検討を行うとしている。
 参入許可基準のうち、役員等に対する法令試験をより厳しくしたり、営業所から車庫までの距離基準を短くすることなどを新たに打ち出したが、さらに参入時の審査を厳格化し、質の高い事業者に限って参入を認め、事業者の質の底上げにつなげるべきだ。全体としての質を高めることを通じて、業界が活性化することを期待したい。

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