社説:税制改正大綱、残る火種
自民、公明両党は24日、2013年度税制改正大綱を決定した。例年の年度改正のほか、現下の円高・デフレ不況からの早期脱却に向け、緊急経済対策関連税制も盛り込み、安倍政権として経済再生に向けて税制面からもバックアップする姿勢を色濃く打ち出した。
今回の大綱の柱の1つが、2014年4月からの消費税引き上げへの対応で、なかでも住宅と自動車への影響緩和が焦点となった。
自民党税調では、住宅関係の検討は順調に進んだが、自動車については自動車取得税と自動車重量税の廃止を求める自動車業界側と地方の財源を死守しようとする地方団体側との間で激しい綱引きが行われた。
メディアの報道合戦も過熱気味で、自動車取得税を巡っては、「廃止」と「廃止見送り」という報道が錯綜し、混乱に拍車をかけた。
車体課税についての最終処理案はタイムリミットの23日になってようやくまとまり、自動車取得税は、消費税が10%となる2015年10月に廃止することが決まった。
ただ、大綱は、焦点となっていなかった自動車税についても言及し、取得税が廃止される消費税10%段階で「グリーン化の強化および安定的な財源確保の観点から」環境性能に応じた課税を実施すると記した。これは、取得税廃止の減収分の一部を自動車税の増税により賄う、とも読める。大綱ではさらに「他に確保した安定的な財源と合わせて、地方財政へは影響を及ぼさない」として、さらに別の代替財源を確保して取得税の税収と同規模の税収を確保する構えを示している。
取得税廃止の原資として自動車税を増税するというのであれば、関連業界の反発は想像に難くない。2014年度税制改正で具体的な結論を得ることになっており、今年末に再び激しい応酬が行われる可能性が高い。
一方、自動車重量税は廃止が見送られ、エコカー減税を恒久化することが決まった。減税を恒久化するということは、裏返せば重量税自体を廃止するつもりはないとの意思表示にも見える。
また、重量税については、税収を道路の維持管理・更新等のための財源を位置づける方向で見直すとされた。この記述が自民党内で問題となり、「道路財源化」を巡って大綱決定の最終段階に来て混乱した。
結局「特定財源」ではなく、あくまでも「一般財源」であることを確認して、原案通りの記述で大綱は了承されたが、「道路の維持管理・更新等のための財源」をどのように具体化するのか、こちらも年末には再び議論になりそうだ。