社説:実体経済への波及急げ
1月の国内景気動向は、新政権の経済政策への期待が高まるなかで回復の兆しが現れているという。
民間調査機関が1月末に実施した調査によると、1月の景気動向指数(DI値)は、前月に引き続き2カ月連続で改善している。とくに、1月の動向指数は前月比2.3ポイント増の38.0と、震災直後の2011年7月(同2.3ポイント増)以来の改善幅だ。
「建設」「不動産」「製造」「運輸・倉庫」など51業種のうち47業種が改善しており、「運輸・倉庫」も改善幅は1.1ポイント増の38.0で、2カ月連続となった。年度末に向けての繁忙期に加えて、復興需要や設備投資の増加、公共投資の期待先取りで動いている。
一方、日通総合研究所が昨年12月初旬に実施した企業物流短期動向調査(物流短観)によると、12年10‐12月の荷動き実績(見込み)は、景気の調整局面入りを受け、荷動きの停滞が鮮明になった。13年1-3月は、荷動きの停滞の度合いが強まるとの予想だ。
新政権のアベノミックスといわれる、大型補正予算や政府と日本銀行との政策協議など、景気・経済対策を織り込んでいないものの、実体経済を反映していると思われる。
物流上場企業の2013年第3四半期累計(2012年4-12月期)決算をみると、業績は10‐12月期(第3四半期)実績が明暗を分けている。
10‐12月期に貨物取扱が伸び悩み、1-3月期も貨物量が急回復する見通しが想定できないことから、通期業績を下方修正する企業が目立っている。また、10‐12月期実績が計画を上回る増収増益であっても、通期業績を据え置いている。
物流短観では、12年10‐12月期の「荷動き指数」見込みがマイナス23と、7-9月期(マイナス15)から7ポイントも低下し悪化した。しかも、15業種のうちプラス業種は生産財卸のみで、14業種はマイナスだった。
2013年1‐3月期の荷動き見通し(2012年12月初旬時点)は、さらに4ポイント低下しマイナス27と見込んでいる。ここにきて、広範囲の業種において、荷動きの減退圧力が強まる見通しだ。
ただ、政府による大型予算案の国会審議や日本銀行のインフレ目標導入など、デフレ脱局と景気回復に向けた経済政策が打ち出されている。復興需要の継続や補正予算に伴う公共投資の実施の効果によって企業マインドの改善が期待されている。
国内景気は期待感が先行している状況だが、緩やかな回復が見込まれている。政府には、実体経済への波及が遅れないよう、景気回復へ向けた力強い取り組みを求めたい。