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日本流通新聞2月25付紙面から

社説:抜かずの宝刀を抜く時だ

 国土交通省が荷主勧告制度の改正案を21日に開かれたトラックの新作業部会に提示した。
 荷主勧告は、トラック事業者が法違反を犯して行政処分を受けた際、「違反行為が荷主の指示に基づき行われたことが明らかである時」、「その他違反行為が主として荷主の行為に起因するものと認められること」との要件を満たせば発動されることになっているが、発動すべき悪質な行為が明示されていないことや、荷主に対する二度の協力要請書発出など要件も厳しいため、これまで一度も発動されたことはない。
 改正案では、荷主勧告の発動対象となる行為を通達で具体的に定める方針を示した。荷主がトラック事業者に対し、違反行為を直接指示、強要する場合のほか、事業者に対する優越的な地位や継続的な取引等を利用して、次のような行為を行った場合に、荷主勧告の対象となりうるとして、具体的な4類型を示した。
 スピード違反をしなければ着けないような到着時間の設定や過積載となるような急な貨物の増量といった類型のほか、手待ち時間を恒常的に発生させて放置しているようなケースを盛り込んだ点がポイントだ。
 手待ち時間解消に向けて行われるべき改善措置として、積載方法やブースの見直し、作業マニュアル等現場改善活動、手待ち時間が長時間化した際の到着時間再設定等のマニュアル化--などをあげ、こうした改善措置が完了するまで当該事業者との取引を停止するよう勧告する、とのイメージも明記した。
 手待ち時間解消の必要性は、次期物流大綱策定に向けた有識者検討委員会でも論点の1つとなっており、手待ち時間の発生に対して車両留置料を支払うなど有料化し、手待ち時間解消のインセンティブとすべき、といったことが議論されている。
 19日の第4回有識者検討委員会では昭和30年代にも荷主とトラック事業者の間で同じような議論があったことが紹介され、50年間同じことが言われ続けている実態が指摘された。
 運送取引では、待ち時間や附帯作業といった本来コストがかかるべき部分が軽視され、立場上弱いトラック運送事業者にしわ寄せされるケースが多く、それが50年間改善されていない。
 手待ち時間を有料化し、手待ち時間を解消しない荷主には勧告を行う仕組みとすることで、物流コストの適正化と物流の効率化が進むことが期待できる。
 1990年の物流2法施行以来、抜かずの宝刀だった荷主勧告制度だが、今、抜く時が来ている。

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