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日本流通新聞3月11付紙面から

社説:まずは川上の取引書面化から

 国土交通省が進める運送取引書面化の実効性を疑問視する声がトラック業界内から出ている。
 2月21日に開かれた第1回トラック産業に係る取組作業部会に示された書面化のガイドラインでは、省令でトラック事業者からの発出を義務付ける内容となっており、荷主に強制力がおよばないためだ。
 「川上の荷主との契約を書面化しないと、元請けと下請けの契約だけ書面化を義務付けても実効性が伴わない」というのが業界の主張で、業界側は法改正により荷主にも明確に義務付けるよう求めている。
 これに対し、国土交通省は「そもそも荷主には標準運送約款で運送委託書の提出を義務付けている。近年、スポット契約を中心に形骸化しているので、荷主団体に対して改めて協力要請したい」としており、省令と約款で書面化を進める考えを示している。
 国交省では当初、高速ツアーバス事故を受けた自動車運送事業の安全対策強化を柱に、道路運送法と貨物自動車運送事業法の改正を検討していた。運送取引の契約書面化も当初は法律改正で行う考えだったが、予算の越年編成などにより国会の審議日程がタイトであるため、法案提出を断念した経緯がある。
 法改正が困難となったため、同省自動車局は予定していた安全対策強化策などをいずれも省令改正や通達改正で行う方針に転換。契約書面化も省令改正で対応することにしたものだ。
 国会日程という客観情勢で法改正が困難になったことはやむを得ないことだが、省令はトラック事業法の輸送安全規則であるため、荷主に対して書面の発出を義務付けることはできない。業界にしてみれば「話が違う」ということになる。
 国交省では、荷主に対しては標準運送約款で運送依頼を書面で提出することを義務付けていることを拠り所として、協力を求めていく考えだ。
 法律での義務付けの方が明確でインパクトが強いことは否定できない。法律での義務付けを行うのであれば、法案提出のチャンスが巡ってくるのを待ち、数年間はモデルケースによる普及促進を図る方法もあろう。
 早期の施行、普及をめざすのであれば、省令と約款で義務付けることになるが、その場合には、荷主からの書面発出を担保するための何らかの工夫が加えられてしかるべきだ。
 川上の取引が適正化されないまま、川下の運送事業者間の取引だけ書面化しても意味がないではないか。

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