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日本流通新聞4月8日付紙面から

社説:赤字脱却へ抜本的制度改正を

 トラック運送事業の赤字体質が続いている。
 全日本トラック協会がまとめた2011年度決算版経営分析報告によると、営業赤字企業の占める割合は全体の57%となり、依然過半数が赤字である業界実態が明らかになった。
 トラック運送事業売り上げは前年度比2.0%減と6年連続の減収で、営業利益率はマイナス1.0%と5年連続の赤字だ。
 分析結果は「多くの中小事業者が事業存廃の岐路に立たされているのが実態だ」と指摘し、さらに昨年12月からの円安による軽油価格上昇を加味すると、「足下の経営実態は分析結果より厳しさを増している」と推測している。
 売り上げの減少に燃料価格の上昇が追い打ちをかけるかたちで、営業損失のマイナス幅は拡大している。営業費用の大部分を占める運送費用のうち、燃料油脂費は8.5%増加する一方、人件費は0.8%減と減少している。
 運送事業の売り上げに対する燃料費の比率は、2009年度に14.2%だったものが2010年度は16.2%、2011年度には17.9%へと上昇している。地域別で見ると、東北は21.9%と高く、40%近くになる事業者もいるという。
 全ト協の軽油価格調査によると、2009年度のローリー平均価格(消費税抜き)は79.81円で、2010年度が90.81円、2011年度が102.09円となっており、今年2月の価格が109.98円であることを考慮すると、足下の燃料費比率は2割程度にまで上昇している可能性がある。
 一方、東京都トラック協会が国土交通省の行政処分強化の方針に対し「行政処分の強化を図るだけでは根本解決にならない」と異論を唱えた。東ト協は「法令遵守できない背景には、輸送の安全確保の原資となる適正運賃収受ができない実態がある」として、実効性ある運賃・料金制度の検討が先決と訴えた。
 同省は、トラック運送取引での契約内容の書面化と書面上での燃料サーチャージ記載を進める考えだが、省令改正で運送事業者側に義務付けるため、荷主にその効力は及ばない。業界内では書面化の効果を疑問視し、法改正により荷主にも書面発出を義務付けるべきとの声が高まっている。
 もはや小手先の政策だけでは修復できないほどトラック業界の構造は歪んでいる。運賃低下と燃料高騰で安全投資もままならない赤字体質の業界を変えるためには、運賃制度も含めた抜本的な制度改正しか道はないのではないか。

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