社説:原価計算の取り組み推進へ
民間調査機関が「タクシー・ハイヤー業界の経営実態」調査結果をまとめた。2002年の規制緩和で供給過剰の状況が続き、2009年10月には「再規制」といわれるタクシー事業適正化・活性化特別措置法の施行で、減車が推奨されたものの売上高や労働環境など「抜本的な業界改善には至っていない」というものだ。
トラック運送事業は、タクシー・ハイヤー業界より12年早い1990年に規制緩和に踏み切った。タクシー事業と異なるのは、運賃が認可制でなく完全自由化している点だ。
トラック運送事業は規制緩和後、競争激化で運賃は一貫して低下している。国土交通省の資料によると、消費者余剰(規制緩和メリット)は3.5兆円だという。ただ、実運送事業者は規制緩和のメリットを享受していないのが現状だ。
協同組合団体が実施している運賃動向調査によると、事業者の9割が「希望する運賃」を下回る運賃で仕事をしている。運賃交渉をしている事業者は3割にも届かない。業界関係者は「『交渉したら値下げされるのでは』との懸念から運賃交渉できない状況にある」と解説する。
トラック運送業の「下請・荷主適正取引ガイドライン」は策定されたが、不適正な取引は広がっている。
例えば「個別の運送内容を考慮しない一律一定率の引下げ」「荷主等が自ら目標額、予算額等を基準として一方的に運賃を設定」「燃料費の上昇等輸送条件の変化にかかわらず低い運賃に据置き」「特定の事業者を特定的に取扱い、低い運賃設定」など、こうした違法行為(『買いたたき』)を指摘する声は少なくない。
では、望ましい取引形態と実例とは——。ひとつは、あらかじめ輸送条件の具体的内容を合意・書面化することであろう(日本流通新聞4月22日付1面「トラック運送 書面契約をルール化/2面「社説」)。
もうひとつは、原価計算に基づく取り組みである。実トラック運送事業者が原価に基づく見積書を提示し、荷主等との十分な協議により運賃設定すること、比較的簡易に算出できる「原価計算マニュアル」を作成すれば、運賃協議に活用できる。また、燃料サーチャージ制を導入し、燃料費について原価計算を徹底する。
原価計算に基づく「適正運賃」が、収受運賃と乖離していることは各種調査で明らかになっている。だが、しかし、安全・安心を賄うコストを無視して事業は持続しない。
全日本トラック協会調査(3月時点)で、9割の事業者が軽油高騰分を「転嫁できない」異常な事態である。原価計算の取り組みは今だ。