社説:Gマーク、国が一層の関与を
国土交通省が昨秋に、Gマークの法定化を検討していたことが明らかになった。
同省は当時、昨年4月の高速ツアーバス事故を受けた自動車運送事業全般の安全対策強化を内容とする道路運送法および貨物自動車運送事業法の改正を検討していた。
法改正では、運行管理者の資格要件強化、処分逃れ対策などのほかに、書面化の義務付けやGマークの法定化も検討されていた。
ところが、12月の衆院選で自民党が圧勝して政権交代が起き、税制改正や予算編成作業が年明けにずれ込む事態となったうえ、7月に参院選を控えて会期の延長も困難なことから、今国会は法案審議日程が極めてタイトな通常国会となった。
このため国土交通省は通常国会への提出法案を絞り込み、自動車局は法案提出を断念した。高速ツアーバス事故対応を旗印とした法改正は、今国会を逃すと困難かも知れない。
Gマークの法定化は幻に終わったが、期待が外れた業界内には今も不満がくすぶっている。
法定化の提案と同時にいわば「抱き合わせ」の格好で同省が業界側に提案した、適正化事業実施機関から国への重大違反速報制度だけが実施に移されるためだ。
適正化機関の指導結果で、点呼が行われていなかったり、運行管理者が選任されていないなど重大違反については即時国に通報し、国が速やかに監査を行えるようにする仕組みで、3月に通達が発出され、10月から施行される予定になっている。
Gマークは、制度開始から10年が経ち、業界にも定着してきた。Gマーク取得営業所の事故発生割合は未取得営業所の半分以下であり、死亡事故については40%以下であるなど、トラック運送事業者の安全性向上に大きく寄与している。今年3月現在で全国1万8107事業所が「安全性優良事業所」として認定されているが、その割合は全営業所数の約2割にとどまっている。
実は、Gマークは、法律にも、省令にも、通達にも規定がなく、全国適正化機関の事業として法で定める「運送秩序の確立に資するための啓発活動および広報活動」の一環として実施されているに過ぎない。
今年2月に設置されたトラック産業に係る取組作業部会でも、Gマーク取得へのインセンティブ拡大が検討課題とされている。
法定化が幻に終わったことを受け国交省では「何か準ずる方策を考えたい」と業界の期待と不満に応える考えを示している。Gマークをよりよい制度に育てるために、国の一層の関与が必要だ。