社説:経営危機突破へ行動しよう
国土交通省の鶴保庸介副大臣と経済産業省の赤羽一嘉副大臣が28、29日に日本経団連(経団連)、日本商工会議所(日商)に対し、燃料価格高騰分のトラック運賃への転嫁について協力要請を行った。
国交省の鶴保副大臣は経団連の宮原耕治副会長(日本郵船会長)に対し、「海運や航空では燃料サーチャージが確立しているが、トラックだけなぜ普及しないのか」と述べ、荷主との契約適正化を図るため、「書面化を強力に進めたい」と理解を求めた。
経産省の赤羽副大臣も「物流業界は弱い立場にあり、燃料費の高騰に耐えられないという悲鳴が私の地元でも聞かれる。どの業界も幸せになれるよう協力をお願いしたい」と、燃料サーチャージを導入するよう要請した。
国(国交省、経産省)は、取引関係で「弱い立場にある」トラック業界の窮状を代弁した形だ。昨年に続く要請だが、今回は「トラック運送業界に大きな打撃を与えることはわが国経済のためによくない」(29日、日商で国交省・鶴保副大臣)との判断からだ。
トラック運送事業は、わが国の国民生活、産業活動を支えるライフラインとして、その重要な役割を果たしていることは、言うまでもない。そのトラック運送事業が「走れば走るほど赤字」という異常な事態となっているは、荷主や世間一般で本当に認識されているのだろうか。
全国トラックドライバーコンテストの優勝者らが全ドライバーを代表して30日、首相官邸へ安倍晋三首相を表敬訪問した。安倍首相は「先の東日本大震災の際には、多くの皆さんが献身的な努力をしていただき、孤立している被災地にたくさんの生活物資を届けてくれた。まさに皆さんのそうした仕事がなければ、日本の経済、日本人の生活はたちゆかない」と、ドライバーに労いと激励をした。
アベノミクスによる景気回復への期待は高まっているものの、中小企業が9割以上も占めるトラック運送事業に実感は乏しい。それどころか、安全・環境コストの負担増で厳しい経営環境に加え、円安で一段と進んだ燃料費の高騰にもかかわらず、これらのコストを運賃に転嫁できないでいる。
“公的物流サービスを担う”トラック運送事業は、いま危機的な状況にある。民間調査機関によると、安全・環境などコンプライアンス(法令遵守)違反が大幅に増えている。急増の理由としては、規制緩和による競争激化で「コンプライアンス」コストを運賃で賄えないのだ。取引関係の抜本的な見直しが必要だ。