社説:広がる「紙と鉛筆」の取り組み
東京都が、トラック運送事業者の燃費を格付けする「貨物輸送評価制度」を本格施行し、149社の低燃費な運送事業者が認定された。
都内で貨物を運送する事業者が対象で、運行させる全車両の前年度1年分の燃費記録をもとに、都が3段階の星の数で評価した。星の数が1つであっても、自動車輸送でのCO2削減の取り組みとして、優れたレベルにあるといえるのだという。
149社のうち、東京都トラック協会の会員が148社を占め、さらにそのうち146社はグリーン・エコプロジェクト参加事業者だ。
グリーン・エコプロジェクトは、東ト協独自のCO2削減対策で、継続的なエコドライブ活動を通じて、CO2排出量の削減、燃費向上に伴うコスト削減、事故防止などをめざす取り組みだ。車両毎の燃費データを収集してデータベースを構築し、解析結果を提供する。
ドライバーが燃料を満タンにした際に、実走行キロと給油量を専用用紙に記入し、月間燃費を算出してエコドライブによる削減効果を把握する。高価な機器を使わず、「紙と鉛筆」で行うことで事業者の負担とならないよう配慮した。自ら紙に記入することで、「気づき」のきっかけにもなるのだという。
2006年に全国に先駆けて開始し、2012年まで7年間の燃料削減量はドラム缶8万4304本、CO2削減量は、杉の木318万本を植樹した場合の吸収量に相当する。燃費向上率は13.56%で、交通事故低減率も30.0%に達する。今年6月現在の参加事業者数は598社、参加車両数は1万6864台だ。
他県へも波及しており、昨年8月から滋賀県で、今年度から埼玉、千葉、愛知、大阪、富山でも同様の取り組みが始まりつつある。
東京都の「貨物輸送評価制度」は、東ト協が収集した燃費データ35万件を活用して制度を構築しており、グリーン・エコの取り組みがなければでき得なかった制度だ。
全国の企業、消費者など2500団体が加盟するグリーン購入ネットワークでは「輸配送契約ガイドライン」を作成中で、荷主がトラック事業者を選ぶ際に、都の評価制度で認定された事業者を優先採用するよう促す方針だ。
国でも経済産業省と国土交通省が連携して今年度、エコドライブのための車載器などに補助金を出すことを通じて燃費データを収集し、将来的に都と同様の評価・格付け制度の構築を目指す動きがある。
東京のトラック事業者の「紙と鉛筆」による取り組みが、国全体に広がろうとしている。