社説:意義深い緊急輸送の記録
全日本トラック協会が今週、東日本大震災における緊急支援物資輸送活動の記録を発行する。
一昨年3月の発災直後から、営業用トラックは緊急輸送に奔走し、その活躍ぶりは広く世の中に伝えられた。ドア・ツー・ドアの輸送特性を活かして、被災地への食料品の7割、飲料水の6割はトラックがその輸送を担った。
にもかかわらず、トラックによる緊急物資輸送についての記録がなく、ある中央省庁の記録では、「鉄道が主役であるかのように書かれている」(全ト協)という。
あれから2年半が経ち、記憶も薄れ、書類も散逸しつつあるため、今後の教訓とするためにもしっかりとした記録として残しておく必要があると判断したという。
東日本大震災時の緊急輸送では、初めて国が物資を発注して輸送を手配するという方式がとられた。全ト協の対策本部では24時間体制で輸送手配を行い、日本通運をはじめとする大手事業者と連携して大規模な輸送手配体制を築いた。
政府による物資輸送は3月12日未明から5月9日まで続き、トラック延べ1925台が出動した。また、地方公共団体の要請に基づく都道府県トラック協会の手配車両数は6月30日までに8702台にのぼった。
全国各地から被災地への幹線輸送は比較的順調に推移したが、肝心の避難所に物資が届かないという問題が起きた。被災地の物資受け入れ体制がすぐに整わなかったことなどが原因として指摘されているが、国土交通省が物流専門家の派遣を要請し、地方トラック協会を通じて民間物流事業者から専門家が現地に派遣されると、仕分けや配送がスムーズにいくようになった。
ヤマト運輸や佐川急便といった大手宅配事業者の活躍も目立った。被災地域に精通する宅配ドライバーらが、自ら被災しながらも自発的に支援物資を避難所などに配送した。
このほか、ガソリン、軽油などの石油製品不足が深刻化し、政府が備蓄燃料を放出することになった。
岩手県では、大型コンベンションセンター「アピオ」を活用した支援物資の保管・仕分け・配送業務が注目を集めた。全ト協の「記録」でも大きく取り上げ、その教訓を踏まえて、「1次集積所は分散を避け、大規模な施設に集約することが望ましい」と問題提起している。
未曾有の災害となった東日本大震災は、様々な分野で課題や教訓を残した。全ト協が発行する緊急輸送活動の記録は単なる記録にとどまらず、具体的な教訓を伝えるものとして意義深い。