社説:処遇改善に荷主の理解を
国土交通省自動車局が、自動車運送事業などの人材確保・育成に向け、プロジェクトチームを立ち上げた。
同局が所管するトラック、バス、タクシー、自動車整備などの業種で人手不足が深刻化しているため、所管業種すべてについて対策を検討することにしたものだ。
田端自動車局長の肝いりで設置されたもので、同局長は「政府として景気回復の好循環を実現していくなかで、経済を支える国内物流をきちんと担えるようにしておくことが重要だ」とその問題意識を述べている。
景気が回復傾向をたどり、人流や物流が活発化する過程で、輸送分野がボトルネックとなることは同局として避けなければならない。一方、人口の減少や少子高齢化の進展により、輸送を支える労働力の確保が今後の重要課題になると見込まれるため、対策の検討に着手したものだ。
プロジェクトチームでは、日本全体の労働力市場、トラック、バス、タクシー、自動車整備の各分野の労働市場の現状を把握し、有識者や事業者からも意見を聞く予定だ。
この年末、トラック業界では車両不足、人手不足が顕在化した。WebKITを利用した成約運賃の指数は昨年12月、前年同月比6.3%アップとなり、一方で成約率は同21.7%ダウンし、求車の需要に応えきれなかった。
都内のある運送事業者は「いくらでも出すから車を出してくれ、という荷主もあった」と年末のエピソードを紹介してくれた。また、「あまりに人が集まらず、労務担当者がふさぎ込んで出社しなくなってしまった」という話も聞いた。
建設業界でも同様で、現場技能者の処遇悪化や若年入職者の減少が、公共事業の入札不調の一因となっている。このため国交省は今月、建設産業活性化会議を設置し、こちらも対策の検討に着手した。
WebKIT運賃指数のピークが示すように、3月がトラック輸送の最需要期だ。景気回復、消費税駆け込み需要に加え、引越のピークとも重なるため、今年はとくに需給が逼迫すると見込まれている。
この問題の根本解決は、賃金と労働条件に行き着くのかもしれない。「昔は仕事がきつくても稼げたが、今は…」という話も業界内でよく聞く話だ。「結局は給料を上げないと人は来ない」と言っていたのは長野県の事業者だ。
荷主にとっても景気回復過程の輸送力確保は大きな課題のはずだ。運転者の処遇を改善できるような運賃改定に荷主の理解を求めたい。