社説:運賃見直し、待遇改善を
物流の労働力確保、輸送力確保に関する検討が各方面で盛んに行われている。
国土交通省の物流部門は4日、物流問題調査検討会を設置し、初会合を開いた。景気の回復に伴い、内航船やトラックの輸送能力不足を懸念する声があがっているため、「物流が景気回復の足かせとなってはならない」との危機感から、当面の対策を検討するものだ。
同省は先月立ち上げた物流政策アドバイザリー会議で、当面の検討テーマを労働力不足問題と国際海上物流の改善としたばかりだ。
アドバイザリー会議は、どちらかというと中長期的にモーダルシフトを推進する政策を念頭に置いているが、物流問題調査検討会は、内航船も不足しているとすれば、当面の輸送能力不足にどう対応するか、という緊急的な検討になりそうだ。
3月のWebKIT求車情報件数が過去最高の12.6万台となったことからもわかるように、この3月は消費増税前の駆け込みによる「特需」もあり、例年に比べて輸送力の不足感が強まっている。
一方で、4月以降は駆け込み需要の反動減により輸送量は大きく落ち込むと見られている。3月に改訂された日通総研の予測によると、12月の予測に比べ想定以上の駆け込み需要があったため、2013年度下期の国内貨物輸送量を9890万t上方修正し、逆に2014年度上期の輸送量を4050万t下方修正した。2014年度上期の需要を想定以上に先食いした、ということだ。ただ、2014年度下期の輸送量は当初予想より7740万tも上方修正している。
4月以降の反動減の程度を巡っては、様々な指摘があり、その予測は難しいが、日通総研では、(1)補正予算により公共投資が高水準を維持(2)海外景気持ち直しによる輸出の増加(3)企業収益改善による設備投資の増加(4)雇用・賃金の改善傾向の定着をあげて「景気後退局面入りは回避される」とみている。
足もとでは、震災被災地での復興が本格化しており、首都圏では2020年東京オリンピックに向けて建設工事などが今後活発化することが予想される。今年度は下期以降、荷動きが持ち直す可能性が高い。
内航船の輸送能力を増強するためには、船舶を建造しなければならず、機動的な対応には困難が伴う。機動力の高いトラックの場合は、運転者を確保することが必須となる。今できることは、荷主が運賃水準を見直し、それを原資に運送事業者が運転者の賃金や労働時間など労働諸条件を見直す以外に方法はないのではないか。