社説:変わる長距離輸送の構図
トラックドライバー不足、とくに長距離輸送のドライバー不足が深刻化するなか、鉄道や海運、さらに航空を活用しようという動きが活発化してきた。
国土交通省は、物流政策立案に当たって関係者の意見を聞くための物流政策アドバイザリー会議で、トラックドライバー不足は構造的に続くと見て、鉄道、海運などの大量輸送機関を活用した改善策の検討を本格化させている。
具体的には、鉄道による海上コンテナ輸送の円滑化に向け、40ft背高コンテナを積載可能な低床貨車を開発したり、港と鉄道の接続改善に向けた検討を進める。また、輸送障害時の代替輸送体制の強化や荷役機器の増備もテーマとしてあげている。
鉄道コンテナの輸送効率向上では、現在ほとんど行われていない鉄道貨物の混載便を検討する。ひとつのコンテナを満載にするほどの荷量がない中小荷主にも鉄道輸送を使いやすくことがねらいだ。積載率が低い土休日の利用促進も課題だ。
さらに、新規貨物の発掘や帰り荷確保のため、荷主や物流事業者が日本各地で発生する貨物の情報を得る仕組みを構築することも検討する。いわばマッチングシステムだ。
一方、内航海運の活用策としては、船舶の大型化のほか、フェリーやRORO船でトラック輸送をする際、ドライバーを乗船させず、トラックのみを輸送する無人航送推進を打ち出した。
トラック輸送そのものを効率化させる対策としては、海上コンテナのラウンドユースをあげ、これについては日本通運がプレゼンテーションし、輸出入荷主の情報を収集するマッチングセンターを設立したことなどを紹介した。
味の素は、トラックドライバー不足への対応策として、今年6月から500km以上の長距離輸送に、初めて船舶輸送を導入するほか、鉄道輸送でも31ftコンテナの活用を強化する。
同社はこれにより長距離輸送のモーダルシフト率を現在の約2倍に当たる87%とし、2016年度までにこれを100%にすることをめざす。
ヤマト運輸は、ANAとの連携強化の一環として、宅急便の航空輸送へのモーダルシフトを推進する。トラックで輸送されている宅急便を航空輸送にシフトすることで、ドライバー不足に対応し、輸送力の拡大と安定化を図る。
こうした動きが広がれば、長距離輸送の構図が大きく変わる可能性がある。