社説:燃料高騰に消費者の理解を
軽油価格の高騰が続き、中小トラック運送事業者から悲鳴が聞こえてくる。特に長距離輸送事業者は「限界だ。企業努力では、どうにもならない」と、国に燃料高騰への緊急支援を求めている。
資源エネルギー庁が4日に発表した軽油の店頭価格(2日時点)は7週連続で値上がりし、全国平均で1l144.3円となった。1年前(2013年6月3日)の131.8円に比べ12円以上も高い水準だ。
全日本トラック協会によると、4月の軽油ローリー価格(全国平均)は1lあたり115円46銭で、リーマンショック後の2009年以降では最高を記録した。2009年3月時点(72円85銭)と比較した場合、46円79銭もの大幅な上昇となる。
高騰の要因については、増税に加えてウクライナ情勢などによる原油高、為替の円安傾向など複数の要因が重なっているとの指摘もあるが、急激に価格が下がる気配はない。
政府は、トラック運送事業の燃料高騰対策として、2013年度補正予算で50億円、2014年度当初予算で60億円の補助金予算を計上したが、補正分ではエコタイヤの補助が進まないなど、なかなか思うように施策効果が発現していない。
地方の農産物を運ぶ中小トラック事業者は「ただでさえ業界はドライバー不足や車両不足にあえいでいるのに、燃料高騰が追い打ちをかけ、どのくらい生き残れるのかが今話題になっている」と話す。
先日、興味深い新聞記事を見かけた。
菓子食品の専門紙で、1面トップで「スポット運送、成約率9.8%/菓子を直撃、活路は値上げ」(5月5・12日合併号)と、バターやマーガリンなどの原材料価格高騰に加えて、車両不足と燃料高騰によるトラック運賃の値上げ要求を紹介して「業界」に警鐘を鳴らしている。
記事によれば、「トラック業界は、軽油価格が1円上がれば、業界全体では167億円のコスト負担増になるといわれている」とし、「運送業から菓子メーカーや問屋に対して運賃値上げ要求が相次いでおり、路線便で20%以上、宅配の企業契約では2倍などという例も出ている」と報じている。
さらにこの専門紙は、こうした事態は20数年ぶりのことだとし、当時は「製品価格の値上げ」により事態を打開した例をあげて、その再現を促している。
深刻な燃料高騰、原材料高騰によるコストアップは、流通の過程で特定の業界にしわ寄せされるべきではない。最終的には消費者の理解を得るしかない。