社説:死亡事故削減へ本腰を
トラックによる交通死亡事故が増加傾向にある。今年1月から5月までの累計の死亡事故は150件で、前年同期の135件と比べて15件、率にして11%も増えている。
国土交通省の事業用自動車総合安全プラン2009を受けて、各業界ごとに死者数目標を立てているが、トラックについては中間目標が未達で、最終目標の達成も厳しい状況にある。
警察庁、国交省からも死者数削減のためのキャンペーンを推進するよう要請されている。
こうした状勢を踏まえ、全日本トラック協会は17日の常任理事会で、今後事故防止対策を強化することを申し合わせた。
申し合わせでは、「あらゆる施策を講じ、交通事故死者数の減少に取り組む必要がある」とし、輸送の安全確保に万全を期すと決意を示した。
全ト協では、過去3年間の各都道府県ごとのナンバー別死亡事故件数を把握しており、このデータに基づき、新たに都道府県別の数値目標を立てることも検討するという。
国土交通省でも、総合安全プラン2009の中間目標未達を受けて、対策強化を検討中だ。
同省が示した今後の政策の基本的な方向性では、「いつ事故が起きてもおかしくない」という緊張感を日々維持し、プロフェッショナルとしての強い自覚と誇りを持った質の高い運転者、運行管理者の育成を図ることを事業主の基本的な責務としたほか、経営者自らが汗をかき、現場と経営者が一体となって基本理念を浸透させ、必要な対策を愚直に繰り返し実施していくこと以外に道はない、としている。
また、地域や業界の関係者が主体的にきめ細やかな事故分析を実施し、地域別の安全対策を検討して推進する体制を強化すべきだとも指摘している。
中型免許の見直しでも、新たな免許区分創設に伴い、一部が緩和措置となることから、総合安全対策への取り組みを求められている。
総合安全対策のうち、国交省は、被害軽減ブレーキの装備拡大と普及拡大、運行記録計の義務付け対象拡大とドライブレコーダーも含めた機器の普及拡大、トラック運転者に対する指導・監督の強化を進める考えで、全ト協は、新規採用運転者等への教育実習の充実のほか、交通安全セミナーや交通安全決議の実施など事業者の意識定着にも取り組むことになっている。
公道を使って事業を営む事業者として、改めて気を引き締め直したいところだ。