社説:先進安全技術に期待する
自動車の安全技術の普及がめざましい。なかでも、「自動ブレーキ」とよく呼ばれる衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)は、乗用車のテレビCMなどでも各社が競ってアピールし、装着車両が急速に増えている。
追突事故が約半数を占めるという特徴のあるトラックでも普及が進む。
大型車(ほとんどがトラック)への装着台数は、このところ毎年2万台程度増え、昨年6万台を超えた。
2013年度の大型トラック新車販売台数は4万1133台だが、このうち2万2356台に衝突被害軽減ブレーキが装着され、新車装着率は54.4%まで高まっている。2008年度にはわずか5.5%だったものがここ数年で急速に増えているのだ。
普及に伴い、価格も低下している。実用化当初は50万円もしたものが、現在は10万円程度へと5分の1に下がっているという。
国交省によると、衝突被害軽減ブレーキの普及率が100%となった場合の年間死亡事故低減件数は641件だ。全死亡事故の13%を削減できる計算だ。このうち警報だけで291件削減でき、自動ブレーキにより350件削減できるとしている。
最近では、高速道路などで前方車両と一定の車間距離を保って追従走行するACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)も普及してきており、安全性とともにドライバーの疲労軽減にもつながっている。将来の自動運転につながる技術だ。
国土交通省が推進する事業用自動車総合安全プラン2009では、中間目標である2005年の死者数目標を達成できなかった。同省では、2018年の最終目標達成に向け、割合の多いトラックについて重点的に対策を講じる必要があるとし、特に死亡率の高い大型車対策を検討する必要がある、と指摘している。
このため、今後の政策の方向性として、安全体質のさらなる強化、コンプライアンスの徹底などのほか、IT・安全技術活用策の1つとして、衝突被害軽減ブレーキのより一層の普及加速を図るための措置を検討するとされていた。
大型トラックには今年11月から装着義務付けが始まるが、国交省では普及を加速させるために、来年度概算要求で補助制度の継続・拡充を検討する方針だ。
中小型トラックについては、義務化が4〜5年先ということもあり、こうした技術がまだ普及していないが、メーカーには是非開発を加速し、車両面からトラックの事故防止に寄与してほしい。