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日本流通新聞9月1日付紙面から

社説:業界全体の運賃底上げ期待

 トラック運送業界のリーディングカンパニーである日本通運が、トラック貸切届出運賃の値上げに踏み切る。実質約15%の値上げで、タリフの改定は、何と24年ぶりだ。
 トラック運賃は、1990年の物流2法施行に伴い、それまでの認可制から事前届出制に緩和された。認可運賃時代は、2〜3年ごとに運賃改定が行われていたが、徐々に実勢運賃との乖離が大きくなり、規制緩和が断行された。
 最後の認可運賃となった1990年(平成2年)運賃は、そのまま届出運賃に移行し、2003年の事業法改正で事後届出制となり、自由化された。
 日通の貸切運賃も1990年運賃のまま長らく据え置かれた。デフレ経済下、実勢運賃も低迷を続けた。
 その「潮目」が変わり始めたのが昨年だ。アベノミクス効果もあり、景気は緩やかな回復過程に入り、デフレ脱却に転換した。
 トラックの実勢運賃も強含みとなり、とくにスポット運賃はドライバー不足もあって大幅に上昇している。
 大手宅配会社が値上げに動き、中小トラック事業者の間でも固定客との値上げ交渉が進展しつつある。
 こうしたなかでの日通による届出運賃改定は、業界全体に大きな影響を及ぼすと考えられる。
 日通の運賃改定幅は20%だ。コストアップ要因として、人件費では、法定福利費の負担増をあげる。事業主負担分は、1990年当時と年収が同じ場合で39%増となり、今後も厚生年金保険料率は増加する見込みだ。
 燃料費については、1990年度の平均が1リットル当たり77.17円だったのに対し、2013年度の平均は131.65円へと71%もの上昇だ。これまでは2008年に設定した燃料サーチャージによる付加運賃で対応してきたが、これを本来運賃に織り込み、燃料サーチャージの基準軽油価格を2013年度価格に引き上げる。
 このほか、環境対策経費であるPM減少装置の装着や尿素水等の購入をあげた。さらに車両費についても、10トン車の希望小売価格が90年の1002万円から2013年には1653万7000円に65%も高騰したことをあげている。
 国土交通省が算出したトラック運送事業のキロ当たり原価は、1991年に375.98円だったものが2011年には508.93円へと35%上昇している。
 実勢運賃は顧客との個別交渉で決まる。ただ、届出運賃の改定で運賃交渉のスタートラインが引き上げられることが期待できる。日通の英断が業界全体の実勢運賃の引き上げにつながることを期待したい。

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