社説:景気はいいのか、悪いのか
トヨタ自動車の今期純利益が初めて2兆円の大台に乗せそうだという。円安と北米での販売増が利益を押し上げ、営業利益は当初見込みより2000億円上触れし2兆5000億円に達する予想だ。
4-9月連結決算も好調だが、国内の販売減を北米、欧州の販売増で補っている構図だ。4-9月の国内販売台数は、増税後の需要の落ち込みで前年同期比7万1000台減の103万台だ。これに対し、北米は9万7000台増の139万5000台、欧州も7000台増の41万4000台と好調だ。一方、アジアは、タイの景気低迷などにより2万5000台減の75万5000台にとどまっている。
トヨタは、営業利益の半分以上を国内で稼ぐが、国内の4-9月営業利益は前年同期比13.4%減の7187億円となり、営業利益に占めるシェアは前年同期の66%から53%に低下した。
通期見通しでも、国内の販売台数は前期比7.4%減の219万台と見込むなど慎重だ。
帝国データバンクがまとめた、今年10月の景気動向調査結果によると、景気DIは第2次安倍内閣発足以降で初めて3カ月連続の悪化となった。
調査結果によると、国内景気はコスト上昇分を吸収できない中小企業を中心に景況感の悪化が広がっており、全国的に低迷しているという。
日銀の追加金融緩和については、一段と円安が進行すると予想。大企業や輸出企業には好材料となるが、輸入企業や内需中心の中小企業の収益を圧迫して業績を悪化させる一因となると指摘し、今後の国内景気は上昇基調で推移するとみられるものの、一転して下降に転じるリスクもはらんでいると分析している。
業界別では、10業界中9業界が悪化し、唯一、運輸・倉庫業は横ばいだった。運輸・倉庫業の先行きについては「年末年始商戦で少しはよくなる」(貨物自動車運送)と好転を見込む声と、「軽油価格の上昇が重い。高速代や社会保険料、所得税などの上昇も響いて厳しい状況が続く」と悪化を予測する声が入り交じっている。
原油価格は下落を続けており、国内石油製品価格の値下がりも期待されるが、このところの急激な円安で国内ではその恩恵を受けられないでいる。
果たして景気はいいのか、悪いのか。各種指標もまだら模様であり、判断がつきにくい。ただ、少なくとも円安により燃料や原材料が高騰している分野には政府として支援が必要ではないか。