社説:規模求め、進むか業界再編
日本の物流企業による海外物流企業の大型M&A(合併・買収)が相次いでいる。フォワーダー大手の近鉄エクスプレスがシンガポールの物流企業を1442億円で、日本郵便がオーストラリアの物流企業を6200億円という巨額で買収した。
人口減で市場が縮小する日本より海外を選択するのは合理的な選択であろうが、一般論として海外での大型M&Aは「買収金額以上の収益を確保することは難しい」ともいわれている。
一方、日本国内では、食品物流企業の老舗である名糖運輸とヒューテックノオリンが10月1日に経営統合する。また、カンダホールディングス、ヒガシトゥエンティワン。東部ネットワーク、高末の中堅4社は2年におよぶ検討を経て、包括的業務提携を締結した。
外部環境としては、製造業、卸売業、小売業の各業界で、再編による大規模化、寡占化が進み、物流企業も大規模化、広域化、高速化に対応することが求められていることが背景にある。
内部環境では、ドライバー不足など労働力確保をはじめ、燃料油などコスト高への対応や効率化、収益構造改革の必要性が指摘されている。
名糖運輸とヒューテックノオリンの経営統合は、食品物流は堅調な成長が見込まれているものの、食品業界の大規模化や広域化などに対応するには、単独企業ではハードルが高いと判断したためだ。両社はグルーバルに変化する食品物流の共通課題に対し、総合物流情報企業として、効率的な物流システムを提案・提供し、企業価値の向上を図る考えだ。
包括的業務提携を結んだカンダ、ヒガシ、東部、高末の4社は、関東・中部・関西に営業基盤を持つものの、ネットワーク、人材の確保、資金力面から「大手物流企業に伍していくには限界がある」(カンダホールディングスの勝又一俊社長)と考えた。荷主企業・業界の大型化やグループ化により、全国規模でのサービスを求められているためだ。
4社はこれまで、大手物流企業のネットワークを活用して荷主の要望に応えてきたが、こうした物流ニーズにも対応するため、自力でシステムやインフラを整備・構築するのではなく、各地域の物流企業が協力し合って全国ネットワークの構築をめざすことにした。
名糖運輸とヒューテクノオリンの売上高合計は2014年度で約1千億円弱規模。一方、カンダなど4社の売上高合計も約800億円規模だ。
大手に伍していくためのネットワーク構築や広域化に向け、業界再編が進む可能性もある。