日本流通新聞  
スペーサー


最新ニュース

日本流通新聞3月16日付紙面から

社説:荷主の理解を求めたい

 公正取引委員会が9年ぶりに実施した荷主と物流事業者の取引実態調査で、物流事業者にとって厳しい取引実態が改めて明らかになった。
 調査は、軽油価格が高騰していた2013年8月から2014年7月を対象に行われた。この間、軽油の店頭現金価格は1リットル当たり137.9円から147.4円へと約10円値上がりしている。
 近年、燃料価格が上昇傾向にあった際にも、荷主から運賃を一方的に据え置かれるなど厳しい取引環境に置かれているといわれていたため、荷主による優越的地位の濫用規制上、問題となり得る行為が行われていないか、調査したものだ。
 調査で、物流事業者に対し、燃料価格の上昇を理由として主要な荷主に運賃の引き上げを要請したことがあるかを聞いたところ、回答があった3050人のうち、半数が引き上げを要請したと回答し、残る半数は要請したことはない、と答えた。
 要請したことがあると答えた物流事業者の約7割は、荷主が引き上げ要請に何らかの形で応じてくれたと回答したが、応じてくれなかったという回答も27%あった。
 公取委ではとくに、半数の事業者が要請すらしてないことを重視。燃料価格が上昇しても運賃値上げを要請できず、物流事業者が厳しい取引環境に置かれていると分析した。そのうえで、荷主が一方的に運賃を据え置いたり、取引に影響が生じる旨を示唆して運賃の引き上げ要請自体をさせないようにする行為は、優越的地位の濫用規制上問題となり得る行為だと断定した。
 「荷主から、『もう明日から来なくていい』といわれる」というセリフは、この業界でしばしば耳にするセリフだ。多くの場合、荷主は物流事業者に対して優越的な地位にあり、物流事業者が隷属的な立場に置かれやすいのが実態だ。
 ただ、荷主の「圧力」が過ぎると、すなわちその地位を濫用すると、独占禁止法上問題となるということだ。
 一方、昨今のドライバー不足により、トラック輸送を巡る需給バランスに変化が起きている。「燃料価格が下がっても運賃は下がらないのでは」といわれるのもそのためだ。そのドライバー不足の背景として、荷主の過度な要求がドライバーの労務環境を悪化させてきたという側面はないだろうか。
 トラック運送業界は来年度から、手待ち時間の短縮など長時間労働の改善に本格的に取り組む。荷主の協力がなければ前に進まない問題だ。トラック輸送、物流に対する荷主の深い理解を求めたい。

原価計算システムのご案内はこちら

原価計算システムサポートはこちら

 

 
takeda