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日本流通新聞3月23日付紙面から

社説:適正運賃収受で待遇改善を

 4月からの新年度まで、あと10日となった。全日本トラック協会は来年度の事業計画策定にあたり、「交通事故・労災事故防止」と「労働力確保のための労働環境の改善・整備」を重点施策から最重点施策に格上げした。
 トラック運送事業を取り巻く経営環境は、燃料価格の大幅な低下により収益環境は好転しているものの、ドライバー不足や個人消費低迷の長期化よる物量減などで「依然として厳しい」という声が少なくない。
 とくにドライバー不足は深刻で、昨年の今頃は消費税引き上げ前の駆け込み需要により、輸送能力不足の事態が様々な形で発生した。その後輸送需要は比較的落ち着いて推移しているものの、業界の人手不足感は依然として強いままだ。なかには「東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年夏頃までは人手不足が続くのではないか」との声もあるという。
 中長期的には、少子化に伴う労働力人口の減少により、人材確保がより困難になる可能性がある。とくに、中高年男性への依存度が高いトラックドライバーについては、中高年層の退職に伴い、今後深刻な人手不足に陥る恐れもある。
 長時間にわたる手待ち時間、「改善基準告示」を遵守できないタイトな運行、契約外の附帯作業など、トラックドライバーの労働環境は過酷さを増している。業界関係者は「これまで、原価に見合った運賃を収受できない場合は、人件費を引き下げて収益を確保する事業者が多く見られた。そのツケが回ってきた」と背景を解説する。
 ある中堅物流企業は「ドライバー不足の深刻化と輸送コストの上昇が経営を圧迫し、現状の運賃水準では輸送体制の維持とサービスの向上は図れない」として、顧客に理解と協力を求めて4月から平均10%の運賃値上げを要請した。
 適正な運賃・料金を収受して、それを原資に労働者の待遇を改善することが不可欠だ。また、賃金の改善と合わせて、長時間労働の解消など労働環境全体の改善が必要だ。
 手待ち時間の短縮や契約外の荷役解消などは、荷主にも理解を求めていかなければならない。
 国土交通、防衛両省は新年度から、物流事業者による退職自衛官への求人を円滑にするための枠組みを創設する。大型免許などの資格を持つ技能人材が多いため、即戦力として期待がかかる。運送会社は全国各地にあるため、故郷で再就職したいというニーズにも応えられる。ただ、他産業より劣る待遇のままでは、それも叶わないのではないか。

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