社説:長時間労働 「本気」で是正を
政府は4月3日、労働基準法改正案を閣議決定し、国会に提出した。改正案では、長時間労働を抑制するため、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率引き上げ(25%→50%)を中小企業に対しても適用することを盛り込んだ。
ただ、現在の長時間労働が改善されないまま、即時に割増賃金率の増加が適用されると、事業者の負担増となるため、適用時期を猶予して2019年4月からとし、その間に長時間労働を抑制するための環境整備を進めることになった。
とくに、トラック運送業は月60時間超の時間外労働を行う労働者の割合が中小企業でも4割程度あるとされ、長時間労働が常態化している。
このため、ドライバーの負担も大きく、脳・心臓疾患等(過労死)の件数も業種別で最も多い。
また、荷主の都合による手待ち時間が長いなど、トラック運送事業者のみの努力で改善することは困難な状況にあるため、国全体でトラックの労働時間短縮に向けた諸対策を進めることになったものだ。
国土交通、厚生労働両省は労基法改正案の国会提出と同時に、「トラック輸送における長時間労働の抑制に向けたロードマップ」を正式に発表した。
両省はこの連休明けにも、中央に「トラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会」を設置する。すでにある「トラック輸送適正取引推進パートナーシップ会議」を抜本的に改組し、労働時間問題についても検討する場とする。中央協議会は、各省の代表者を本省局長級にレベルを引き上げるほか、労働時間問題を取り扱うことに伴い委員を追加する。
トラック運送事業の長時間労働は、荷主の厳しい物流ニーズに応えるため、事業者がやむなく受け入れてきた歴史がある。一方で、こうした他産業より劣る労働条件ゆえに人手不足が顕在化し、経済のインフラである物流が滞る懸念も出てきた。
九州のトラック事業者らは、運転者の労働時間を定めた改善基準告示を順守できないとして、基準の緩和を求めているが、今回の長時間労働抑制の取り組みは、荷主を巻き込んで基準を守れる運行を確立するための好機ではないか。
これまで「放置」されてきたといっても過言ではないトラック運送事業の長時間労働だが、これを機会に本気で是正に取り組まなければ産業としての将来像は描けまい。官民挙げての4年間にわたる壮大なプロジェクトであり、トラック産業の維持・発展のためにも関係者による「本気」の取り組みを求めたい。