社説:社会全体の理解と協力を
大手物流企業の2015年3月期決算がほぼ出揃い、各社の利益の伸びが目立っている。要因として、多くの企業が運賃単価の是正、不採算貨物からの撤退などをあげている。
駆け込み需要の反動から、物量回復の遅れや、ドライバー不足による人件費をはじめとした外注費の負担増が指摘されていたが、適正運賃収受などの取り組みによって、負担増をカバーしているようだ。
各社が増益要因としてあげた、荷主企業への運賃・料金単価の是正交渉や、長時間労働を前提とした不採算貨物からの撤退などは、経営面だけの問題ではなく、輸送の安全確保をはじめとするコンプライアンスに必須の取り組みだ。
そう指摘するのは、日通総合研究所がまとめた「トラックドライバー不足問題の要因と対応」と題するレポートである。
レポートは、ドライバー不足の要因としてあげられる「長時間労働で低賃金な労働条件」の実態に触れている。曰く、ドライバー賃金は全産業平均と比べ月収は約5万円の差で、年収では100万円以上もの格差。月間実労働時間は全産業平均に比べ約30時間以上も長い。
レポートは、このままの労働条件ではドライバーが確保できず、安全・安心な輸送サービスを提供できない危険性が高いことを、荷主や元請に、これまで以上に主張すべき時期にきている、と強調している。
多くの物流現場では、これまで通りの輸送が行われているため、荷主企業からは「本当に不足しているのか」との声を耳にするという。
ところが実際は、「物流を止めてはならない」という責任感のもと、現存のドライバーが休日出勤や残業をこなし、事務職や管理職もドライバーを兼務して乗り切っているケースが少なくない、と物流業界の実態を明らかにしている。
ドライバー不足にもかかわらず、物流が滞らないのは、「事業者とドライバーの頑張りによって輸送体制が維持されているため」だが、このような頑張りには、自ずと限界があり、このままでは輸送の安全面でのリスクが高まることも懸念される、と危機感を示した。
レポートはさらに、これまでのようにドライバーの労力に依存した物流から、「ドライバーに優しい物流」へと見直していくことが、今後のあるべき物流の姿ではないか、と問いかけている。
最後にレポートは、「ドライバーに優しい物流」の実現には、荷主企業や消費者を含めた社会全体の理解と協力が不可欠だ、とまとめている。全く同感である。