社説:物流大変革時代を乗り切る
国土交通省の物流部門(物流審議官)による政策立案の動きが活発だ。
最近では、交通政策審議会交通体系分科会に物流部会を設置し、4月30日に社会資本整備審議会道路分科会の基本政策部会との合同会議を始めて開催した。法律に基づく審議会に物流政策を議論する場が設けられたのは、2001年の国土交通省発足以来初めてのことだ。
問題意識としては、顕在化したトラックドライバー不足を背景に、「トラックを中心とした従来の物流システムが大変革を迎える時代になった」(物流部会長の野尻俊明流通経済大学長)ことがある。
交政審と社整審では、部会の下にそれぞれ小委員会を設置して合同で審議を進め、8月に中間とりまとめを行う予定だ。
その小委員会第1弾として、交政審の物流体系小委員会と社整審の物流小委員会合同会議が5月29日、開かれた。この小委員会の主な検討テーマは、労働力人口の減少に対応した物流の効率化・省力化で、モーダルシフトのさらなる展開やトラック輸送のさらなる効率化に向けての施策、国際コンテナ戦略港湾・貨物鉄道等の既存インフラ施策とソフト施策との連携策などだ。このほか、物流施設の機能強化や災害対応、トラック隊列走行など先進技術導入、我が国物流システムの海外展開に向けた施策なども検討する。
初会合では、トヨタ自動車、イオングローバルSCM、井本商運、味の素、全国物流ネットワーク協会からのヒアリングを行い、各社の物流効率化への取り組みを聞いた。
トヨタとイオンは鉄道貨物輸送を高く評価し、イオンは「トラック運賃の値上げを克服するため、リードタイムを伸ばしながら鉄道のボリュームを増やしコストを吸収したい」とトラック運賃の上昇を受けて、鉄道輸送を拡大していく考えを示した。
一方、味の素は、モーダルシフトを「BCP対策と長距離トラック不足対策」と位置づけ、輸送障害などのリスクを分散するため、内航海運と鉄道の「複線化」を提唱した。
全流協は、特積み各社が取り組む幹線共同運行などの動きを紹介し、東北〜九州間の途中で運転者が交替する乗継運行(中継輸送)では、拘束時間短縮の効果が出ていることを明らかにした。
全流協が「競争から協調へと企業の意識も変わった」と指摘したことが印象的だ。
人手不足時代の物流オペレーション確保には、「企業間の連携」がキーワードになりそうだ。