社説:成長続けるネット通販と物流
大型物流施設の需要が、インターネット通販の成長とともに拡大している。
物流不動産のジョーンズラングラサール(JLL)社は、日本のeコマース市場が2020年に向け2ケタ成長が続くと予想し、ネット通販の基地となる物流不動産への旺盛な新規需要が期待できるとしている。
JLL社の需要予想によると、日本のeコマース市場は2020年に2014年比で約2倍の25.1兆円に拡大すると予測。2020年までに国内で計約200万坪の物流不動産がネット通販向けに新規に必要と試算され、なかでも首都圏を中心とする関東では2020年に向け年間約15万坪の新規需要が生じる可能性があると予測している。
首都圏のような大都市圏では、顧客(消費者)が家にいる時間に荷物を届けることが難しくなっている。ネット通販大手はコンビニの店舗を最大限に活用することで活路を見出そうとしている。ラストワンマイル争奪戦は、コンビニ店舗がネット通販の新たな主戦場になっている。
成長を続けるネット通販業界にとって、物流は重要な経営課題である。配達は当日配達も珍しくない。増え続ける荷物をいかに効率的に顧客に届けるか、配送の「ラストワンマイル」を制することができるかが大きなポイントになっている。
オフィス用品・通販大手のアスクルと大手飲料メーカーのネスレ日本が物流で業務提携した。ネスレ日本は成長戦略の一つに直販(通販)ビジネスを掲げており、物流提携によって、通販サイト商品の西日本への配送は、アスクルの当日配送などのノウハウを活用し、直販ビジネスの拡大を図っていく。
アスクルが、メーカーの通販商品の配送を受託するのは初めてのことだという。ネスレ日本の受託在庫の管理や拠点から出荷、顧客への配送まで、独自のノウハウを活用しサービス提供をする。すでに物流子会社の「Bizex」が大阪市此花区に新たな拠点を設けており、22日から配送を開始する。
国土交通省の調査によると、宅配便の配達のうち、2回以上の再配達が約2割発生している。再配達の削減に各社はコンビニや駅、郵便局などで受け取れるサービスを展開しているが、国交省は宅配受取りを各社で共通化するよう提案している。
モノが届くのは当たり前で、物流サービスは一般に認識されにくい。ただ、荷主企業の中で、経営戦略に重要であるとの認識が芽生えていることは歓迎したい。そして、物流現場での効率化、生産性向上に理解と協力を求めたい。