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日本流通新聞7月6日付紙面から

社説:運転者の健康を守りたい

 自動車運送事業で働く運転者の脳疾患による事故を防止することを目的として、一般社団法人運転従事者脳MRI健診支援機構が発足した。
 厚生労働省の統計によると、2013年度の脳・心臓疾患による労災支給決定件数は306件で、このうち3割に当たる93件を自動車運転従事者が占めている。
 いわゆる「過労死認定件数」とも受け止められる数字だが、93件のうち、83件がトラック運転者だ。
 全就業者数4600万人のうち、トラック運転者は84万人で全体の2%程度に過ぎないが、過労死認定では3割を占めることになる。異常に高い比率だといえる。
 同機構の理事に就いた小川彰岩手医科大学理事長・学長によれば、脳卒中で入院中の患者はがんの1.5倍で、「脳卒中は国民病」なのだそうだ。そして、脳卒中の中でもクモ膜下出血だけが突然発症し、事前に予知することが難しいのだという。
 クモ膜下出血は、脳動脈瘤が破裂することにより起きる。破裂する前に動脈瘤を発見できれば予防になる。脳動脈瘤が破裂した場合、35%が死亡、29%が寝たきりなどの重篤な予後になるという。
 代表理事に就任した水町重範水町メディカルグループ総院長によると、運転中の突然死は、心臓疾患か、クモ膜下出血によるものが多く、心臓疾患の場合は時間的に少しゆとりがあるが、クモ膜下出血の場合は即、命にかかわる。
 自らのクリニックで3年にわたって運転者を中心にスクリーニング検査を行ってきたが、運転者が突然死すると、周囲の交通、歩行者などを巻き込む可能性があり、旅客輸送の場合は乗客にも被害がおよびかねないことから、「もう少し大きな観点で考える必要がある」(水町氏)と判断し、同支援機構の設立に至った。
 日本は、世界でも有数のMRI(磁気共鳴画像法)保有国だという。支援機構では、運転従事者を対象に、未破裂脳動脈瘤の発見に特化したMRI健診を普及させるため、脳MRI健診に関する勉強会・セミナーの開催、運転従事者への健診受診促進活動、支援機構認定医療機関の認定、「脳MRI健診済証」の発行などを行う。
 発足記念式典に出席した小幡鋹伸全ト協副会長は、来秋リニューアルする中部研修センターでは運転者の健康管理に重点を置く考えを示し、脳MRI健診についても補助金を検討していくことを明らかにした。
 国やトラック協会など関係団体、事業者が協力し、運転者の健康を守っていきたい。

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