日本流通新聞11月16日付紙面から社説:総活躍へ高速料金割引を全日本トラック協会が、毎年恒例となった「トラック業界の要望を実現する会」を開いた。年末の予算、税制改正シーズンを前に、与党である自民、公明両党に業界の要望事項を改めて伝え、その実現に向けた決意のほどを互いに確認し合う場だ。 今年の業界要望の1丁目1番地は、高速道路料金の大口・多頻度割引最大5割引の継続だ。業界側は当初恒久化を求めていたが、道路局の来年度概算要求では事項要求にとどまり、予算要求には至らなかった。 2014年度、2015年度と2度にわたり補正予算で予算措置されてきたが、来年度分についても今年度の補正予算が頼みの綱となる。 要望を実現する会で要望事項の説明を行った小幡副会長は「人件費や車両費の高騰が相次ぐなかで、適正運賃を収受できず、厳しい経営環境に変わりはない」として、割引率の継続を求めた。 小幡副会長は、国土交通省の試算を取り上げ、現在18%にとどまっている高速道路利用率を欧米並みの30%に高めると、交通事故による死者数が年間600人減少し、負傷者数も同20万人減少すると指摘。さらに、燃料消費量の減少、渋滞の緩和、CO2削減などの効果をあげ、渋滞解消により1.5兆円もの経済効果が得られる、とその社会的、経済的意義を強調した。 一方、大口・多頻度割引最大5割引の継続はこれまで、燃料高騰対策として予算措置されてきた経緯があるため、昨年に比べ燃料価格が落ち着いている今年は、財務当局の姿勢が非常に厳しいとも言われている。 この2年間、毎年約500億円が措置されてきたが、裏返せば、この措置がなくなれば500億円の負担増となることになる。 トラック運送事業者にとって、高速道路の利用は、輸送時間の短縮、定時性の確保など物流サービスの質に直接影響を与えることはもちろん、一般道路の交通事故減少、排ガスや騒音の緩和といった社会的な意義がある。とくに車体が大きい交通強者であるトラックは、極力高速道路に誘導し、一般道の安全、環境を守るべきだ。 これに加え、トラックドライバーの労務負担軽減、長労働時間の改善を図るためにも、高速道路の利用が不可欠となる。折から、トラックの長時間労働改善、生産性向上には、国をあげて取り組んでいる最中であり、安倍内閣がめざす「一億総活躍社会」の実現に向けて、ドライバーをはじめとするトラック運送事業の関係者が一歩前に踏み出すためにも、高速道路を利用しやすくする料金割引が必要ではないか。
|
|