日本流通新聞3月7日付紙面から社説:事業継続のカギは災害後1年11日、東日本大震災から5年を迎える。 帝国データバンクがまとめた、東北3県沿岸部の「被害甚大地域」に本社を置く5000社の追跡調査によると、1400社を超える企業が休廃業に追い込まれている。震災から5年を経てなお、全体の約3割が実質的な活動停止に追い込まれたままだ。 一方、7割の企業は幾多の困難を乗り越えて事業を立て直し、現在も事業を継続している。事業を継続している3600社のうち、約6割が震災前の売上水準を回復している。 県別に見ると、福島県が他の2県に比べて厳しい状況にある。事業を継続している企業は4割にとどまり、休廃業した企業が6割を占める。 トラック運送事業についてみてみると、被災3県の「被害甚大地域」に本社を構えていた151社のうち、86.1%に当たる130社が5年後の今も事業を続けている。 休廃業した企業は13.6%に当たる21社だ。 県別に見ると、やはり福島県が厳しい状況だ。福島県の「被害甚大地域」にあったトラック運送事業者25社のうち、5年後の今も事業を継続しているのは6割に当たる15社にとどまる。休廃業したのは10社で、4割が活動停止に追い込まれている。 最も事業者数が多い宮城県では、「被害甚大地域」のトラック運送事業者108社のうち、98社が事業を継続しており、その割合は9割を超える。 この調査は、震災発生後間もない2011年7月から5回にわたり、岩手、宮城、福島3県沿岸部の被害甚大地域での企業活動を定点観測してきたものだ。 震災から3ヵ月で全体の50%が事業を再開し、1年後の2012年2月時点でその割合は70%にまで上昇した。1年経過後は大きな変化はなく、ほぼ横ばいで推移し、今回5年後の調査では前回調査比微減に転じた。 このことから、帝国データバンクでは、事業再開・継続のカギを握るのは災害発生後の当初1年だと指摘。この1年を過ぎると、経営者の事業意欲が失われ、「新たな借金をしてまで事業を続けられない」と考える企業も増えていくのだろう、と推測している。 そもそも、人口減少や後継者難などの構造的な問題もあり、時が経つほど事業再開の動きが停滞に向かっていくためと見ている。 こうしたことから、調査結果は、震災復旧・復興事業としての中小企業支援策は、より早期の段階でこそ求められる、と指摘している。
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